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「3年目の浮気」としてのNMB48「妄想マシーン3号機」

渡辺美優紀のラストシングルとなった、NMB48『僕はいない』。

このTypeCに収録されている、teamBⅢの楽曲「妄想マシーン3号機」にただいま夢中です。この曲の魅力は、なんといっても底抜けに明るくて楽しいところ。

 

「妄想マシーン3号機」の心地よさ

Aメロの細かい譜割りのせいで、マシンガンのように言葉を浴びせかけられ、脳内は軽くパニック。Aメロの語尾から連続するように始まるBメロでは期待をグイグイ盛り上げていき、サビで解放。「妄想マシーン3号機」は思わずこちらも歌いたくなるほど耳馴染みがいい。実際に「もおっそうマシーンさんっごうっきー」と歌ってみるとわかるが、このフレーズは口が気持ちいいです。生理的な快楽というか、とにかく「妄想マシーン3号機」のリズムは快感。聴いている間は歌詞の内容が頭に入ってこないし、聴き終ってもなにひとつ得るものはない。この、ただただ気持ちいいだけの歌がクセになってしまった。

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A面の「僕はいない」や、渡辺美優紀ソロ曲の「夢の名残」がシリアスなだけに、「妄想マシーン3号機」のにぎやかさがひときわ貴重になっている。

ナンセンスなMV

楽曲の中身のなさは、MVにもきちんと反映されている。

ひとことで言えば、いい意味でテキトー。乃木坂46や欅坂46のMVに顕著な、世界観の統一とストーリー性の重視という姿勢とは真逆だ。でも、破たんするほどめちゃくちゃではない。メンバーを魅力的に映したシーンがいっぱいあって、NMB48のMVという枠内にはきちんと収まっている。すばらしいバランス感覚だと思います。

MVは、渡辺美優紀扮する中堅OLが、甘やかされ社長・藪下柊と甘やかし専務・渋谷凪咲にご立腹し、辞表を書こうとしているストーリー・パートと、メンバーがチアリーダー風の衣装で踊るダンス・パートのふたつで構成されている――はずなのだが、何度見返しても、ふたつのパートの関連性がわからん。YouTubeにショート・バージョンが公開された際は、全編通して見れば理解できるだろうと思っていたのだが、甘かった。いざフル・バージョンを見てもさっぱりだ。オフィスでおかんむりだったOLが、いつのまにかレーザー光線の中でチアリーダー風の衣装を着て踊っている。

がんばって解釈すれば、社長や同僚のいい加減さに怒っていた堅物社員みるきーが、ついに心を開いて自身もお気楽社員になったという心情の変化を描いているのかもしれない。でも、OLもチアリーダーも歌詞のストーリーとまったく関係がないけどね。

 「妄想マシーン3号機」とは?

で、ここまでは前置きというか、「妄想マシーン3号機」の魅力についての部分。

本題はここから。

YouTubeにMVが公開されてからというもの、ぼくはタイトルの意味が気になってしかたなかった。「妄想マシーン3号機」。なかなかシュールレアリスティックな言葉のつながりです。歌詞のストーリーからすれば「妄想マシーン」と言うのは理解できる。この歌は、浮気の妄想をするアホな男が主人公だからだ。

でも、「3号機」ってなんだ?

たしかに、「さんっごうっき」というのは口に気持ちいい。「いっちごうっき」や「にぃごうっき」よりも明らかに気持ちいい。しかし、本当にそれだけなのか。ほかに意味はないのか。こうして考えたすえにわかった。「妄想マシーン3号機」には元ネタがあるのだ。

上に書いたように、この歌は浮気の妄想をする男が主人公だ。

多くのパートが、男の主観視点から歌われる。

たとえば、一番のAメロ。

この胸の愛の器 一体どれくらい入るんだ?

君以外の女の子が気になってしまった

もちろん僕の本命は 君だってわかっているだろ

だけどまだまだ 愛をもう一人分くらいイケる

「君だってわかっているだろ」というのは、リスナーにではなく恋人に語りかけている。つまり、この歌はリスナーへのメッセージはゼロで、あくまで「僕」と「君」の二人称的な関係性を描いている。これは、二番のAメロでも同じ。

小さいね 愛の器 すぐにいっぱいになっちゃうよ

君一人であふれちゃって もうキャパシティーがない

例えばもう少しくらい 余裕があってもいいんじゃないかな

もっと大きな男にならなきゃいけないと思う

余談だが、「余裕があってもいいんじゃないかな」というフレーズ、ぼくは猛烈に好きです。さだまさしの「関白宣言」に出てくる、「俺は浮気をしない/たぶんしないと思う/しないんじゃないかな/ま、ちょっと覚悟はしておけ」に匹敵するダメ男フレーズでしょう。この男の尻に敷かれた感じがはっきりわかる。

デュエットソングとしての「妄想マシーン3号機」

「僕」と「君」の二人称的な関係である以上、当然、恋人である「君」の視点による詞もある。一番のBメロでは「おバカな夢を見るな」だけだが、特に顕著になるのが、二番のBメロだ

器 大きくしたって変わらないわ

私への愛で満杯

無駄なことをしなくていい

「もっと大きな男にならなきゃ」という男に、「無駄なことをしなくていい」とばっさり。この部分は、明らかに恋人である「君」のセリフだ。男と女のやりとりを描いている。つまり、「妄想マシーン3号機」はデュエットソングなのです。

ここまで来れば、元ネタははっきりするでしょう。

ずばり、「妄想マシーン3号機」の「3」は「3年目の浮気」の「3」だ!

「3」にかけてこじつけてるわけじゃなくて、実際、ふたつの曲はよく似ている。どちらも、浮気をめぐる男女のやりとりだ。男は無理やりにでも理屈をつけて浮気を正当化しようとし、女はそれを「バカな」こととしてたしなめる。偶然というには、あまりにもできすぎじゃありませんか。

ただ、「妄想マシーン3号機」の「僕」はあくまで妄想をしているだけで、実際に行動に移す勇気はない。おまけに、彼女のことを「お前」ではなく「君」と呼ぶ。このへんが、昭和の歌謡曲である「3年目の浮気」と、21世紀の女性アイドルが歌うJpopの「妄想マシーン3号機」との違いだと考えると、ちょっとおもしろい。

21世紀的感覚からすると、「3年目の浮気」の「俺」の言い訳というのはちょっと眉をしかめてしまう。はっきりいうと、この曲からはDVの気配が感じ取れる。最後の最後に男が暴力ふるいそうで冷や冷やする。でも、歌のモチーフは同じでも、「妄想マシーン3号機」というコミカルなタイトルでオブラートに包み、考えが顔に出てしまう男のささやかな言い訳というストーリーに読みかえ、ギターがギュインギュインなってるポップなサウンドに変えて、歌手を女性だけにすることで、グッと受け入れやすくなる。あらためて、秋元康のプロデューサーとしての手腕にうならされた――てなことを考えたんだけど、どうかな、やすす。

「妄想マシーン3号機」=「3年目の浮気」説は当たってますか?