家から出て握手したら負けだと思ってる

完全在宅アイドルファンによるブログです

アイドルの握手会はオシャレをして行くべきなのか?

 

「 最も早くオシャレになる方法」というサイトに、おもしろい記事があった。

ここに書いてあることは、大きく分けて二つ。

①握手会にオシャレをしていけば、アイドルから認知してもらえる

②握手会にオシャレをしていくのは、アイドルへの礼儀である

というもの。

このサイトを運営しているのは、メンズファッションのバイヤーであるMBさん。

本業の経験を生かして、まぐまぐからファッションについてのメールマガジンを配信したり、コミックNewTypeで連載中のファッション指南マンガ『服を着るならこんなふうに』の企画協力をするなど、幅広く活躍している。 

ぼくは「最も早くオシャレになる方法」というサイトができたころかチェックしていて、MBさん初の著書『最速でおしゃれに見せる方法』も読んだし、一時期はメルマガも定期購読していた(いまでも、ファストファッションマストバイなどの企画や、気になるアイテムの情報が欲しいときは月単位で講読します)。

ドレスとカジュアルのバランス、セットアップの着こなし方、シルエットをきれいに見せる服の選び方など、ぼくのファッション知識は、ほとんどMBさんから教わったものだ。

そんなわけで、ぼくの基本的な立ち位置は親MBというか、はっきりいえばMB信者なのだけれど、この記事の内容にはちょっと違和感を覚えた。

 

アイドルから認知される=かっこいいと思われること?

アイドルから認知されることについてMBさんはこう書いている。

恋愛にはならないかもしれない、友達にはならないかもしれない、
でも「個別に認識されること」「(好印象で)記憶されること」の喜びは感じることができます。
好きな人や憧れの人に「その他大勢」ではなく「Aさん」と個別に認識されることは誰しも嬉しいものです。

そして「個別に認識される」「好印象で記憶される」には「おしゃれ」が必須です。
(中略)
人はその人がどんな顔でどんな性格なのかよりも「着ている服」で印象を形成するものなのです。
だとすると「好印象を残すには服装をこだわること」と帰結します。

「オシャレですね」
「格好いいですね」
「スタイルいいですね」
「モデルさん・・・ですか??」
これは私が過去セクシー女優のサイン会&握手会で言われた言葉。
私はセクシー女優好きで、撮影会とかサイン会とかよく行ってました。(さすがに最近はあまり行かないですけど・・・笑)
別に私は特別体型整ってないし、見た目に優れたわけじゃないですが。
オシャレすればこういったセリフは引き出せます。

MBさんにとって、アイドルから認知されるとは好印象で記憶されること=かっこいいと思われることらしい。

でも、「Aさん」と個別に認識されることと、好印象で記憶されることと、かっこいいと思われることは、それぞれ似ているけれど別の問題なのだ。したがって、「「好印象を残すには服装をこだわること」と帰結します。」というMBさんの言葉は言い過ぎだろう。オシャレであるに越したことはないけれど、必ずしもオシャレでなくてもかまわない。

にもかかわらず、おそらくMBさんは意図的にこの異なる問題を一緒くたにしている。なぜ意図的にやっていると推測できるかといえば、この「最も早くオシャレになる方法」というサイトの目的はメルマガの宣伝だからです。オシャレをしなくても好印象を持ってもらえるなんて書いてしまっては、メルマガや著作の宣伝にならないからね。

握手会でオシャレをするのは「礼儀」なのか?

といっても、ここまではそんなに目くじらを立てることではない。

なぜなら、「アイドルに好印象を残すにはオシャレが必須」という主張には飛躍があるものの、オシャレをして損をすることもないから。それに、大好きなアイドルから「オシャレだね、かっこいね」といわれるのは最高にうれしいはずだ。そう言ってほしい人は、迷わずMBさんのメルマガや本を参考にするべきです。

ただし、オシャレというのはやりたい人がやればいいという程度のものであって、強制されるようなものではないはずだ。それなのにこの記事は、いつのまにか、オシャレをすることは義務であるかのような論調になっている。

握手会やサイン会など・・・せっかく憧れの人に会うんだから、
「格好いいね」
「オシャレですね」
と褒められたいじゃないですか。
そこから何があるとかじゃなくて、憧れの人ならば「単純に褒められる」だけで嬉しいはずです。
そしてそれは彼女達に対する礼儀でもあるはずです。
「あなたのことが好きだから、オシャレをしてきました。」
「あなたを特別だと思っているから、服装を整えてきました」
当たり前のTPOだと思います。

(中略)

「特別なこと」「特別な人」と認識しているのなら、
「服装を整えていく」というのは相手に対する礼儀です。
「どうでもいい服装」は「どうでもいい相手」「どうでもいいイベント」に対するものです。
「特別な人」「特別なイベント」なら「特別に整える」ことをするべきです。
そういった文化がどうも日本には足りない・・・。

前半部分に書いてあるのは、「握手会にオシャレして行けば、アイドルからかっこいいと思ってもらえるぜ」という話だった。これは個人の自意識の問題ですよ。ファンからすれば切実な、でもそれ以外の人からすれば非常にどうでもいいこと。

ところが、途中から「服装を整えていくのは礼儀」といっている。「オシャレをすると認知してもらえる」というテクニック論が、「オシャレしない奴は礼儀知らず」というマナーの話にすりかわっている。

ぼくは、これはちょっとずるいと思う。

汗臭いとか、首がヨレヨレといった不潔な格好で握手会に行くのは、たしかに礼儀知らずだ。しかし、きちんと洗濯をした清潔な服を着てさえいれば、どんな格好をしようと文句をいわれる筋合いはないはず。

MBさんのスタンスは、「理論さえわかればオシャレは簡単。ファッションは最高の自己啓発だ」というものだったはず。これは、ぼくを含めた多くのファッション難民を勇気づける言葉だった。

しかし、この記事で書かれている「オシャレをしないってことは、あなたがアイドルをどうでもいい相手だと思っていることになります。それが嫌ならオシャレをしましょう」的な論理は、近頃話題になっている、IT機器の知識がない高齢者を標的にしたPCデポの手口と変わらない、ほとんど脅しに等しいものである。

こういうことをすると、ますますオシャレって難しいものって認識が強まるだけの気がするのだが、MBさんはそのことに気づいていないのか。はたまた、最初は脅しでも結果的にはオシャレになるんだから問題ないという考えなのか。

ぼくにはよくわからない。

TPOにあった服装とは?

こうしたやり口を棚上げしたとして、まだ疑問は残る。

果たして、握手会という場にオシャレな服装はふさわしいのだろうか。

MBさんのコーディネートはたしかにオシャレだ(以下の画像は上述の記事から拝借しました)。

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でも、TPOにふさわしいかといえば、これはまた別の問題だろう。MBさん自身がおっしゃるように、握手会というのは特別なイベントだ。昨今の人気アイドルの場合、多くの握手会がイベント会場を貸しきって行われる。いってみれば、これはお祭りみたいなものである。それも、アイドルとファンが協働で盛り上げるお祭りだ。

だとしたら、そこで求められる服装も平時とは異なるものになるはず。お祭りにはお祭りにふさわしい格好があり、海には海にふさわしい格好がある。TPOを重視するならば、MBさんが参考として載せているような服装ではなく、むしろ推しメン缶バッチや推しメンタオルといったファンアイテムを身につけ、アイドルグループの公式シャツを着た、ザ・アイドルファンの格好こそがふさわしいとさえいえる。

オススメ握手会コーディネート

そんなわけで、MBさんの記事にはいろいろと問題があることがわかったと思うが、じゃあ、実際問題どんな服装で行くべきなのか。もちろん好きな格好をすればいいのだが、ある程度の指針を示すことはできる。

 

1.握手会MAXエンジョイ・コーデ

上半身:公式Tシャツおよび公式アウターなど。

下半身:普段履きのもの(あれば公式のもの)。

靴:普段履きのもの(あれば公式のもの)。

アクセサリー:公式のタオル、団扇、缶バッチ、スマホケース、時計など、その他あるだけの公式グッズを身につける。

解説

長所:ひとめで誰推しかわかるため、自分の愛情をこれでもかとアピールすることができる。アクセサリーをできるだけ多く使うのがコツ。

短所:アイドルからかっこいいと思われることは期待できない。また、意外と似たような恰好の人が大勢いたりするので、強い印象を残せるかは微妙。

備考:この格好で会場入りするのはかなりキツイので、できれば普通の服で現地に行き着替えたほうがよい。また、公式のズボンや靴を販売しているアイドルグループは少ないので、上半身と下半身の統一感に欠けるのが難点。SKE48の場合、ASBeeとのコラボシューズが販売されていたので、この心配はない。

 

2.普段着コーデ

上半身:普段着ているもの。

下半身:普段履いているもの。

靴:普段履いているもの。

アクセサリー:普段身につけているもの、もしくはワンポイントで公式グッズ。

解説

長所:出費がほとんどない。そのままの格好で行き帰りができる。

短所:イベントのワクワク感を演出できない。普段着ているものと言った場合、たいていのオタクはネルシャツにジーンズにスニーカーとなるので、はっきりいってダサくなる。

備考:握手会への気負いが一切ないコーディネートなので、良くも悪くも地味。いわゆるオジサン系オタや家族連れにこの手の格好をした人が多い。あまりにも普通すぎるかなと思ったら、公式の団扇を持参すればそれらしい格好になる。

 

3.ファッション感度やや高めコーデ

上半身:公式Tシャツおよび公式アウターなど。

下半身:MBさんオススメのユニクロのパンツ。

靴:MBさんオススメのスニーカーおよび革靴。

アクセサリー:MBさんオススメの時計およびブレスレット、または公式グッズ。

解説

長所:上半身で握手会のイベント感を演出しつつも、下半身でオシャレさを担保するハイブリッド・コーデ。

短所:特になし。あえていえば、推しメンへのオタアピールの度合いにおいて、握手会MAXエンジョイ・コーデに劣る。

備考:要素としては、2の普段着コーデと同じ。ようするに、普段からオシャレな人は放っておいても3になる。アクセサリーの公式グッズについては、大きさや部位によってオシャレさが変化するので要注意。

MBさんオススメの商品については、まぐまぐから配信されているメルマガと『服を着るならこんなふうに』などが詳しい。「日刊SPA」のウェブ版や「最も早くオシャレになる方法」にも掲載されているので、まずは無料で読めるウェブサイトの方からチェックしてください。

 

4.握手会会場に迷いこんだオシャレ野郎コーデ

上半身:MBさんオススメのシャツあるいはアウター。

下半身:MBさんオススメのパンツ。

靴:MBさんオススメのスニーカーおよび革靴。

アクセサリー:MBさんオススメの時計、ブレスレットおよび公式グッズ。

解説

長所:これまであった上半身の公式シャツがなくなった分だけ、ぐっとオシャレ度はアップ。うまくいけば、「オシャレですね」の一言がもらえるかも。

短所:特になし。しいていえば、3と同様、イベント感がなくなる。

備考:上半身も置き換えたため、一見するとただのオシャレさん。冷やかしに来たかのようだが、公式グッズが彼のガチ感を証明している。午前の部で握手をした後、公式グッズをカバンの奥にしのばせれば、彼女とデートすることも可能。当然ながら、このコーデではセットアップも着ることができる。

 

5.「おれはカッコイイといわれたいぞ!」コーデ

上半身:MBさんオススメのシャツあるいはアウター。

下半身:MBさんオススメのパンツ

靴:MBさんオススメのスニーカーあるいは革靴。

アクセサリー・MBさんオススメの時計、ブレスレット。

解説

長所:誰がどう見てもオシャレ。サイズ感などを間違いさえしなければ、街中でも握手会会場でも、オシャレさんとして羨望のまなざしを向けられる。

短所:オシャレすぎて、かえって会場で浮く可能性あり。人目を集めたくない人は避けるべきかも。

備考:ようするにMBさんが着ているものをそのままマネをすればいいだけ。もはやアクセサリーすら公式グッズでないので、どこからどう見てもドルオタではない。4との違いは、ユニクロやファストファッション以外のブランドも使用するところ。そのため、靴下に2000円払ったり、ジャケットに6万円以上費やすなど、ドルオタとしてはかなりの出費を覚悟しなければならない。アイドルから「かっこいい」と思われたいという、ただ一点に向かって研ぎ澄まされたコーディネート。ベクトルが違うだけで、本質は1の握手会MAXエンジョイ・コーデと同じだ。

 

番外編.非公式アイテムでアピール・コーデ

上半身:推しメンがハマっているものに関連したシャツおよびアウター。

下半身:同様のパンツ。

靴:同様の靴。

アクセサリー:同様のもの。

解説

長所:アイドルグループの公式グッズを使うことなく、推しメンがハマっているものに関連した商品を身につけることで、「きみのSNSは毎日チェックしているから、好きなものは全部知っているよ」と愛情をアピールすることができる。なんせ相手の興味のあるものを身につけているので、アイテム選びさえ間違わなければ、確実に強い印象を残せる。

短所:たぶん、やりすぎると気持ち悪いと思われる。上下の統一感を保つのにバランス感覚が必要。また、このコーデの場合、たとえば野球のユニフォームや女装なども当てはまるので、かならずしもオシャレに見えるとは限らないので要注意。

備考:たとえば、推しメンがアニメ好きなら今期の流行アニメのシャツを着ていくといったふうに、グループの公式グッズ以外でアピールをする。アイドルの趣味と自分の趣味が重なっている場合、無理をすることなくアイテムをそろえられる。

 

以上、とりあえずぼくが思いついた組み合わせを例示した。

もちろん、現実にはいくつかのバリエーションが混ざるので、あくまで指針として参考程度にとどめてほしい。

記事の最後に、MBさんはこういっている。

そしてオシャレをするのに別に特別お金も必要ありません。ちょっとだけ頭を使うくらいです。
皆誰しも同じ様に服を着るのです。皆誰しもある程度は服を買うのです。
同じリソースを使うのなら最大効用を狙う方が賢いでしょう。

MBさんの握手会認識がどうであれ、彼のメソッドは非常に実践的だ。

同じ公式Tシャツを着ていても、くたびれたジーンズをスウェットパンツやスラックスにするだけでずいぶん印象が変わる。MBさんのメルマガでは読者からのQ&Aも募集しているので、着ていく予定のシャツの画像を添付すれば、最適なコーディネートを教えてもらえるだろう。

結局、握手会はオシャレをして行くべきなのか?

握手会にオシャレをして行くべきなのかといえば、それは人それぞれだ。

思い切り目立ちたい人もいれば、普段着のまま来る人もいる、デートみたいに着飾っている人もいる。

最低限の清潔感さえあれば、誰にも文句をいわれる筋合いはない、その程度のものだ。

しかし、ズボンを変えるだけで全体の印象が激変するとすれば、そのおかげで、多少なりともアイドルに良い印象を与えられるとすれば、3000円程度の買い物は決して高くないとも思う。