AKB48「だから君が好きなのか」に、泣いた
AKB48の8枚目のアルバム『サムネイル』TypeBを買いました。
このアルバムには発表済みのシングルに加えて、いくつかの新曲も含まれている。そのなかでも特にお気に入りなのが、このためにアルバムを買ったといっても過言ではない、「だから君が好きなのか」という曲だ。
歌唱メンバーはグループをまたいだシャッフルユニットで、 AKB48から田野優花、team8から小田えりな、SKE48から須田亜香里、NMB48から須藤凛々花、NGT48から荻野由佳が参加している。
小田えりなと荻野由佳が大好きなぼくにとっては、この曲のメンバーはまさに俺得である。
ところで、小田えりなはこれ以前にもAKB48の「また あなたのことを考えてた」という曲に参加している。こちらはコテコテのラブバラードだったので、タイトルが似ている「だから君が好きなのか」もバラード系なのかと思ったら、これが大違い。
アップテンポで爽やかなEDMだった。
正直いって、『AKB48のオールナイトニッポン』で初めて流れたのを聞いたときは、非情につかみどころのない曲だなと思った。田野優花も「歌うのが難しかった」といっていたように、Jポップでよくある、AメロBメロで溜めてサビで盛り上がるというような歌ではない。むしろ、サビの手前では間があって盛り上がりを意図的に拒否しているような気さえする。AメロからBメロまでスルスルと進み、サビの手前で一拍間があって、気づいたらサビも終わっている感じだ。
ところが、このテンポ感が歌詞のストーリーと絶妙に合っているのだ。
この歌の主人公である「僕」は「君」のことが気になっている。しかし、その理由を「僕」はわからない。どうして「君」に惹かれるのか。「僕」は「君」を「花」に例えて、「君」がどういう人間なのか、「君」のどこに惹かれるのか、心の中で思いを巡らせる。歌の早いテンポは、いわば「僕」が「君」のことを思い描く速度だ。「僕」の頭の中には「君」のことが次から次へと浮かんでくる。「君」は、辛いときも不満をいわず、飾ることなくいつも笑顔で、ありのままで――そうやって「君」のことを考えていると、まるで薫風が吹き雲の隙間から陽の光が差したように、「僕」は気づく。
君のどこに惹かれ
心が揺れるんだろう
私生活なんて
知らないのに・・・
肩肘を張らずに
空を見上げている
鳥たちが横切った時も
孤独だと感じずに
だから君が好きなのか
だから君が好きなのか
一度目の「だから君が好きなのか」は、まるで天啓だ。このとき、「僕」は「君」への想いを発見する。心のなかにあった正体不明の感情に恋という名前がついた瞬間である。そして、この発見の喜びと「君」への想いを確かめるように、そっと繰り返す。「だから君が好きなのか」と。
まさにこの歌は、人が自分の想いに気づいた瞬間という、最もきらめきに満ちた場面を切りとっている。と、同時に、前段の「君のどこに惹かれ/心が揺れるんだろう/私生活なんて/知らないのに・・・」という部分はファンとアイドルの関係そのもので、この歌を聴いた人は誰でも、自分が好きなメンバーのことを思わずにはいられない。もちろん、ぼくは荻野由佳と小田えりなのことが頭に浮かんだ。というか、この歌はふたりのために秋元康が当て書きしたんじゃないかとすら思える。「肩肘を貼らずに/空を見上げている」なんて、自然体でいつも笑顔のふたりにぴったりの言葉だ。
だからこそ、二度繰り返される「だから君が好きなのか」というフレーズを聴いて、自然と涙が出た。歌の中の「僕」と同じように、ぼくの心の中にもあった「何故?」に色と形が付き、「ああ、そうか」と納得したからだ。
だから、小田えりなや荻野由佳が好きなんだと。
やすす先生、ふたりに素敵な歌をありがとうございます!