外山大輔プロデュース「ミネルヴァよ、風を起こせ」公演の感想
2月28日に初日を向かえた、外山大輔プロデュース『ミネルヴァよ、風を起こせ』公演をDMMで見ました。
16期研究生公演をのぞけば、これはAKB48にとっては久しぶりの新公演。当日は正座待機をしてその時を待ちました。同じような人が多かったのか、どうにもDMMの接続が悪くてところどころ止まってしまったのが残念。
まあ、その後オンデマンドでも見直すつもりだったので問題ないんですが。
さて、この公演は、いままでのファンによる著名人公演とは違い現役の音楽家であり48グループに楽曲を提供している作曲家によるプロデュースされたものである。つまり、プロが選んだメンバーがプロの選んだ曲を披露するということで、否が応でも見る側の期待値は上がっていたわけだが、うれしいことに、いや、うれしみずなことに、そのハードルをやすやすと越える出来だった。
端的にいって、『ミネルヴァ』公演めちゃくちゃ楽しい。
以下、楽曲ごとに具体的な感想を書きます。
重力シンパシー
茂木忍と舞木香純のアナウンスがあってしばらくした後に、いよいよ出囃子のOvertureが流れる――のだが、これがいつもと違う。強風とともに、ギターアレンジの加わったOvertureなのだ。
そして、背中を向けて舞台に立ったメンバーたちがスポットライトの明かりとともに振りかえり、「重力シンパシー」のイントロが流れる。
センターに立つのはチーム8の岡部麟。
このインパクトはすごかった。茂木と舞木という名前の似ている二人による影アナから推測すると、前田敦子に声が似てるからセンターは岡部麟って決めたのかなとも思えるが、なんにせよ、思わず振りかえった瞬間「おおっ」と声が出るほど驚いた。
「重力シンパシー」の楽曲の良さは言わずもがなで、こんな名曲が『SKEフェスティバル』公演までほとんどほったらかしになっていたのがつくづく不思議。チームサプライズはこれ以外にも名曲がいっぱいあるので、みんなどんどん使ってほしい。
ゼロサム太陽
この曲、初めて聴いたかもしれない。
いいですね。
どこかで陽が上るときは同時にどこかで陽が沈んでいるというのを、誰かが恋をした瞬間誰かが失恋しているということにたとえていて、とても切ない。この後にある「不器用太陽」と同じく、好きな女の子のために自分の気持ちを諦める歌です。
センターの清水麻璃亜も『あんた、ロケロケ』のようなバラエティでは見せないシリアスな表情をしていて、それがとても魅力的だった。
特に、この最後のキメ顔ね。
熱烈な清水麻璃亜ヲタがいたらしく、「まりあ~!」と大歓声が上がっていて、こういうのもとても好ましく思えた。
私たちのReason
イントロが流れた瞬間、声あげて喜びました。
この曲、『永遠プレッシャー』の劇場版カップリングというまったく目立たない場所に置かれたせいでリクエストアワーでもさっぱりだけど、超名曲でしょう。
アイドル好きでこれ好きじゃなのはありない、ってくらいのド直球のアイドルソングにしてラブソング。
特に大サビ。
なぜ好きになったの?
なぜ私だったの?
聞いてみたいけど胸が苦しいよ
この一番美味しいところを大西桃香が独り占め。
これは大西桃香好きになるだろ~
武藤十夢が大森美優にちょっかい出してイチャついたりしていて、非常にいいものを見た。まさに目の保養。
大好きな曲を聴けて、イチャイチャしてるのも見れて、モモンガの釣りアピールも見れて、これだけで『ミネルヴァ』公演見て良かった。
ラベンダーフィールド
チームAの『M.T.に捧ぐ』で何度も見ているけど、今日は初日ということもあってか、それともメンバーが違うからなのか、新鮮に感じた。みんな元気よく手足を動かしていて、汗をかいていて、よかったですね。
この福岡聖菜の横顔、美しかった。
コップの中の木漏れ日
SKE48のユニット、ラブクレッシェンドの楽曲。
さっきまで凛々しい表情を見せていたせいちゃんが、出だしでトラブルに見舞われる(おそらく、靴が履けなかったと思われる)。このへんのヘッポコ具合はステージ上で迷子になっていた研究生のころから変わってなくて、もはや微笑ましいレベルだ。
バレエのように手足を大きく使う振付もあり、シアターの女神村山彩希のコケティッシュな優雅さがいかんなく発揮されるぴったりの楽曲。
オフショアガール
とうとうこの時が来た!
AKB48の劇場公演に乃木坂46の楽曲が選ばれ、それが白石麻衣のソロ曲で、担当するのは市川愛美というサプライズ多すぎパート。
16期生をバックダンサーに市川愛美がソロで歌って踊るのだが、なんだかいつもよりかわいくて驚いた。自己紹介では「初日に選ばれたのは初めてなのでがんばる」と涙ぐんでいたし、このソロも爽やかでアイドルらしくてよかった。
これから気にしてみようと思いました。
夢でKiss me!
『M.T.に捧ぐ』公演の宮脇咲良のオリジナル曲を中西智代梨が披露。
どう考えても悪ふざけというか、HKT48つながりで選んだろと半笑いでいたら、生歌でがんばっていたし意外と悪くなかった。声がぶれる部分を観客の歓声が後押ししていてアットホームな雰囲気だったし、後半部分では親衛隊に扮したメンバーがステージにあらわれて盛りあげる演出もあり、むしろ本家よりも楽しかった。
口移しのチョコレート
余韻に浸るちよりを押しのけて茂木忍、大西桃香、舞木香純が登場。
これはねぇ、まあ正直エッチでしたね。
セクシー担当の茂木ちゃんはもちろん、かすみんもがんばっていたんですけど、断トツ大西桃香が目立っていた。
男子中高生がモンモンとして眠れなくなるくらいのレベルです。
なんといってもマイクの持ち方。
科を作るために手首を不自然すぎる角度に曲げて指先でそっと添えて握る感じ。
元からのクセもあるんだろうけど、上の「私たちのReason」のキャプチャ画像を見ればわかるとおり、ここまで極端ではない。つまり曲調に合わせてマイクの持ち方も工夫しているということで、これは見上げたプロ意識。
お見事。
おしべとめじべと夜の蝶々
岡部麟と清水麻璃亜のユニット。
「口移しのチョコレート」と同様のセクシー系楽曲なんだけど、こっちは全然エッチではなかった。これ、理由は簡単で、ぐんまりが一生懸命セクシーを演じようとしているのが伝わって微笑ましくなっちゃうんですよ。
りんちゃんはかなり堂に入ったふるまいなんだけど、ぐんまの隠しきれない朗らかさが常にあって、「お、がんばれよ!」と思える、これはこれでいいパフォーマンスだった。
記憶のジレンマ
『夢を死なせるわけにはいかない』公演は、半分これのために見ているといっても過言ですらないくらい好きな曲。
せいちゃんと後藤萌咲の表情がとてもいい。
不器用太陽
SKE48のシングル曲。
武藤十夢の歌い出しがすばらしい。本家の松井珠理奈に声が似ているってこともあるけど、ややハスキーで低い声が曲の雰囲気に合っている。
太陽をモチーフにしている点といい、曲のストーリーといい、「ゼロサム太陽」と近いものがあるんだけど、外山さんはこういう好きな子のために身を引く男の歌が好きなんだろうか。
夏の前
HKT48の『控えめI love you!』のカップリング。まだ木本花音がいたころのteamK4名義の曲だ。
曲自体も高校生の初々しい恋愛を扱っていてかわいいし、花の冠をかぶり白いワンピースを着たメンバーがとにかく素敵で、いまでもこの爽やかなMVをたまに見直す。
やっぱりぐんまヲタが多いようで十夢へのコールがまったく聞こえないし、最後も「まりあ~!」の大歓声だった。
ぐんま、すごい!
Make noise
こちらも同じくHKT48の楽曲。
この公演のセットリストはおおむねラブソングなんだけれど、この「Make noise」は珍しく恋愛がテーマでなく、おまけにゴリゴリのダンスナンバー。
谷口めぐのがんばりを感じる。
君のために僕は・・・
うーん……悪くはないんだけど、「Make noise」と同じハード系ダンスナンバーなので、続けて聴くとちょっと飽きるかも。
十年桜
定番曲でもう飽きるほど聴いているので、正直あまり感想はない。
強いていえば、茂木ちゃんがかわいかった。
大人列車
「十年桜」が終わった瞬間、間髪いれずにイントロが流れるこの構成はよかった。この曲はなんといってもメロディーラインが強烈にすばらしい。兒玉遥に優るとも劣らない川本紗矢の歌い出しでぐっと引き込まれて、本日何度目かの清水麻璃亜ヲタの「まりあ」コールに驚愕した。
混ざり合うもの
乃木坂46とコラボした楽曲。
あんまり真剣に聞いたことなかったけど、いい曲ですね。
テーマ的には、NMB48の「君と出会って僕は変わった」と同じでこういうの大好きです。
なにより、ゆうなぁめぐのそろい踏みを見られただけで合格。
風は吹いている
感動しました。
明らかに気合いが違う。もちろんいままでの曲で手を抜いていたというわけじゃないけど、「風は吹いている」は目に見えてメンバーの意気込みが桁外れ。
目力といい、ダンスのキレといい、神がかったものを感じた。
かっこいいAKB48を見られて大満足。
まとめ
はじめに書いたとおり、ぼくはこの公演をとても楽しみました。
もちろん、これには個人的な理由もある。
清水麻璃亜、岡部麟といったチーム8から大抜擢されたふたりは前から大好きだったし、岡田奈々、村山彩希、谷口めぐのゆうなぁめぐのトリオが勢ぞろいしたし、武藤十夢と大森美優や茂木忍と(初日は出ていなかったけれど)向井地美音といった仲良しコンビがそろっていて、こうしたツボを心得た人選という理由がひとつ。
セットリストについても、ほぼすべてが直接的に恋愛を主題とした楽曲で、人によっては遊び心がないと思うかもしれないが、むしろぼくはこのストレートな選び方に好感を持った。外山さんって、めちゃくちゃピュアな人なんですね。特に「私たちのReason」や「夏の前」を入れてくるあたり好みがいっしょ。
やっぱり、アイドルは恋の歌をうたわないとダメでしょう。
もちろん不満もある。
たとえば、やけに夏の歌が多いとか(「不器用太陽」、「夏の前」、「オフショアガール」)。チーム8メンバーがスポットライトを浴びているぶんだけ、込山榛香や川本紗矢や岡田奈々の出番がちょっと少ないとか。
当たり前だけれど、まだまだダンスがそろっていない部分があるとか。
これとかね。
しかし、これは些細なことだ。
重要なのは、メンバーが堂々と自身を持って楽しそうに、なにより真剣に歌って踊ること。その意味で、やはり今回の白眉は最後の「風は吹いている」だった。
外山さんが公演発表のShowroomで語っていたように、『ミネルヴァよ、風を起こせ』という公演名は、哲学者ヘーゲルの『法の哲学』という本の序文に書かれた言葉に由来する。手元にある中公新書の『法の哲学Ⅰ』にはこうある。「ミネルヴァのふくろうは、たそがれになってはじめて飛びはじめる」。
ミネルヴァというのは、ギリシア・ローマ神話における知恵や芸術の神。たぶん、外山さんはこの「たそがれ」という言葉に惹かれたのだろう。
何のたそがれかといえば、もちろんAKB48のたそがれだ。
ざっくばらんにいえば、48グループはたそがれに差し掛かっているのかもしれない。テレビのCMを席巻し、東京ドームでライブを開催したころと比べれば、人気の陰りは一目瞭然だ。
でもだからこそチャンスでもある。
勝手に外山さんの意思を推測して代弁すればこんな感じだ。
世間のおまえら。
いまAKBは終わりだとか思ってるかもしれないけど、全然そんなことないぞ。
むしろここからが始まりだ。
おまえらが気づいてないところで、新しい時代の風は吹いてんだよ。
その息吹を感じろ。
まずは初日は大成功。
あとは、この熱い思いを途切れさすことなくステージで踊るだけだ。