井上ヨシマサ「神曲縛り公演」でカッコイイAKB48が帰ってきたぞ!
7月20日に初日を迎えた、井上ヨシマサさんプロデュース『神曲縛り』公演をDMMで見ました。
岡田奈々をエース(ところでエースってなんだ?)に、ヨシマサさん曰く「実力はあるのに知名度が追いついてないメンバー」を集めた「神曲」だらけの公演。ちょっと尋常じゃないくらい楽しみすぎて、いざ見たらガッカリしないかなと不安でしたが、それは杞憂でしかなかった。
いつも通り、一曲ずつ感想を書いていきます。
RIVER
真っ暗なステージにメンバーが現れ、観客のひとりが「なぁちゃん!」と絶叫。シンバルが「チャッチャッチャッ」と鳴るや、岡田奈々が「AKB~」と掛け声を発する。客席は静かにどよめき、ステージの照明がメンバーのシルエットを映し出す。
大げさでなく鳥肌が立った。
2016年の紅白歌合戦でも「RIVER」は歌われたが、残念ながらそのときはストンプはなし。横山由依の「AKB~」の後にすぐサビに移る超ショートバージョンだった。言っちゃ悪いが、これを決めた人はなにもわかっちゃいない。「RIVER」で重要なのは、自分を鼓舞するようなストンプと「前へ進め!(Got it!)」のくだり。「RIVER」の「夢への道を遮る川を越えろ!」というメッセージは、この冒頭に詰まってる。
ストロボを炊いたストンプからの、
軍曹岡田による「前へ進め」の号令に「Got it!」と応じるメンバー。
さすがタイ陸軍士官学校を卒業しただけあって敬礼が美しい。
これなら川を渡れそうな気がする。
定点バージョンを見直したが、全員がひとつひとつの振りをビシっと揃えてるのがわかる。
まさにぼくの見たかった「RIVER」。
1994年の雷鳴
息つく暇もなく、イントロがスタート。
緑の照明によってメンバーの体がまだらに光り、なんとも言い難いエロティックさを演出する。
背が低めな岡田&田野のセンターを長身の早坂&藤田が挟むフォーメーションは見栄えがいい。
ここ最高にかっこよかった。
曲に合わせて厳しい顔つきだった早坂つむぎが、最後に見せた一瞬の笑顔。
よかったです。
ただいま恋愛中
前二曲とはがらりと変わって、ここからはアイドルソングの三連発。
小田えりながニッコニコの笑顔で歌っていて曲にぴったりでした。
投げキッスで撃ち落とせ!
本田仁美がかわいい。
後藤萌咲はおそらく170㎝以上あって手足がずば抜けて長いので、良くも悪くもステージで目立つ。まだ15歳ということでこの曲のセンターに選ばれたんだろうけど、ミスキャストかも。
たぶん、17歳くらいからがもえきゅんのポテンシャルが発揮される。
真夏のSound good!
超いいです。
どこまでも青い海と空
僕達の関係に似てる
水平線は交わってるのに
そう 今はまだ わがままな妹のようさ
もともと、ここのメロディーと歌詞と歌声が特に好きで、「真夏のSound good!」を聞くときは毎回楽しみにしてる。
たぶん、「どこまでも~」は横山由依(ゆいはん)の声、「僕達の~」は田野ちゃんの声、「水平線は~」はおだえりの声、「そう 今はまだ~」は横山結衣(よこゆい)の声が前に出てる気がするが、これがめちゃくちゃ良かった。
特に2番は出色の出来。
さっきまでのあの風景とは
空気まで変わった気がする
海と空がちゃんと向き合って
そう お互いのその青さ 映し合っている
本田仁美と小嶋真子の声が合わさった完璧なまでにガーリーな歌声が「さっきまでのあの風景とは」と歌い、横山由依と竹内美宥がやや硬質な歌声で「空気まで~」と続き、大人っぽい声の藤田奈那と北澤早紀の「海と空がちゃんと向き合って」があり、岡田奈々と小田えりなの声が混ざり合ったほとんど理想的なボーイッシュな歌声が「そう お互いのその青さ 映し合っている」と、サビへの期待を煽る。
本当に感動しました。
以前なにかの雑誌で向井地美音と横山由依がインタビューを受けていて、そのときの話題で、
「スタッフから『真夏のSound good!』のときは誰が歌っているかわかったのに、いまはあまりわからなくなった。でも、最近のAKBはまた誰がどこを歌っているのかわかるようになってきたねといわれてうれしかったんです」
といった趣旨のことをゆいはんが語っていたけど、この公演の「真夏のSound good!」は本家を越えたといっても過言ではない。
もちろん、Aメロ出だしの高橋みなみのハスキーな歌声や渡辺麻友の甘い声には敵わない。でも、上述したBメロは確実にこの公演の勝ち!
メンバーの歌声がひとつひとつ粒立ちながら、でもしっかり重なってる。特に小田えりなの声が公演ver.の魅力を圧倒的に高めている。
何度も何度も見返して聞いた。
そのままCDにしてくれ。
恒例の自己紹介があって、ユニット曲のコーナーへ。
泣きながら微笑んで
暗転した状態でメンバーがステージにあらわれ、そのたびに客席から「おぉ!」と声が上がる。
まず竹内によるキーボードの演奏が始まり、
続いて、古畑によるサックスがあり、
岡田がひときわまぶしいスポットライトを浴びて歌いはじめる。
この演出からして見事だったし、やっぱり生の演奏による生歌はいい。
岡田奈々は2016年のリクエストアワーでも「泣きながら微笑んで」を歌っているが、その原曲ver.と比べると、だいぶテンポがゆったりしていてムーディーにアレンジされている。当時の岡田は黒髪ロングで、声もいまよりずっと女の子っぽい高く澄んだものだったが、一年の間に茶髪のショートカットになり声はハスキーに。ハスキーな声は低音を出して喉がつぶれたせいだと思われる。幸か不幸か、それが個性になっている。2016年はまだ女の子が背伸びをして大人の歌をうたっていたけど、今回はばっちりハマっている感じ。テンポが遅いおかげで歌声の抑揚や表情が多彩で、そこにサックスの悲しげな音色が重なって情感たっぷりに仕上がっていた。
大サビの「泣きながら微笑んで/あなたを見送りましょう」は、感情いっぱいの歌声といい表情といい最高。
まるでディナー・ショー。
最後、ちょっとだけ客席の拍手が速すぎたけど初日なのでしょうがない。
拍手のタイミング難しいよね。
Everyday、カチューシャ
岡田・竹内・古畑のトリオに峯岸みなみが加わって、四人で「Everyday、カチューシャ」ボサノヴァ・ヴァージョンを披露。
「泣きながら微笑んで」ではキーボードに徹していた竹内みゆみゆが、セクシーな歌声をいかんなく発揮。
力の抜けた歌声がぴったりでした。
古畑奈和のサックスの見せ場も存分に用意されている。
後のMCコーナーで、峯岸みなみが「ボサノヴァ・ヴァージョンにしちゃったけど、大丈夫だったかな」と笑っていたけど、その心配もわかる。
なんというか、原田知世が「時をかける少女」をボサノヴァ・ヴァージョンで歌ったときの違和感というか、「いや、おれが聞きたいのはそっちじゃないんんだけど・・・」という感じもたしかにした。
でも、これはこれでアリだとも思う。
鯖街道
スタッフとメンバーが機材を撤収している間、峯岸みなみが前説を朗々と語る。
演歌特有のコブシやリズムに手こずっている様子で、ところどころ声が上ずってはいたけど、表情はなかなか雰囲気がある。
なにより、間奏では「よっ、ジーナっ!」と声援が飛び、2番からは客席の手拍子も加わるなど、とっても暖かい空気だった。
千秋楽でばっちり決まったらかっこいいぞ。
客席から紙テープを飛ばすみたいな演出があってもいいかもしれない。
孤独な星空
退廃的なムードがたまらん。
もともとはシングルのカップリング曲で歌っているのは篠田チームAだけど、「真夏のSound good!」同様、今回のメンバーも負けず劣らず美しい。
遊郭を舞台にした切ない歌だけあって、メンバーひとりひとりがグッと役に入りこんでいる。
ここなんて、照明とフォーメーションがあいまって、ため息が出るほど美しかった。
最後なんて、こんなビシっと終わるんですよ。
これは是非とも定点でも見るべき。
曲調に合わせて、ゆったりと、しかし的確にメンバーが動いているのがわかって興味深いです。
ちなみに、こんなにキメキメのよこゆいだったが、
扇子を落として、一瞬だけ素に戻っていた。
次はがんばれ。
MCのコーナーでは、
後藤「早坂つむぎちゃんはわたしに憧れてAKBに入ったんですよ」
峯岸「いまは誰が憧れなの?」
早坂「素敵な先輩に出会って、いまは岡田奈々さんです」
でひと笑いあり、後半のダンスナンバー4連発へ。
カモネギックス
まばたきする暇もないくらいゴリゴリのダンスが繰り広げられる。
こんな感じで、メンバーが自分で考えたソロダンスの見せ場が全員分。
スポットライト独占。
とにかく圧巻の一言。
ソロダンスはそれぞれのメンバーの個性があるし、全体のダンスもきっちりそろってる。
バカみたいなたとえだけど、なんかE-girlsみたいだった!
あと、当たり前かもしれないけど、みんなウエストが引き締まってる。
Beginner
田野ちゃんの「In your position!」が力強く響く。
抜群にかっこいいです。
大サビの「未来を信じているか」のこのジョジョ感!
最後にピタリと決まったクラウチングスタートポーズ。
これぞ「Beginner」と呼ぶにふさわしいパフォーマンスだった。
定点で見ると、ところどころメンバーがいなくなったり、早坂つむぎが動線を間違えて竹内美宥とぶつかりそうになったりもしていたけど、まあそれはこれからどんどん良くなるはず。
UZA
横山結衣が振付を担当。
さすがにこれだけダンスナンバーが連続すると振りが遅れるメンバーも出てくる。その中でも、自分で手掛けただけあって横山結衣はまだまだ元気だし、なんといっても田野ちゃんの貫禄といったら。
本当にウザそうに踊ってて曲の雰囲気を巧みに表現してる。
ESCAPE
田野優花・本田仁美・古畑奈和・横山結衣のユニット。
もうかなり満身創痍な感じがする。
決して悪くはないのだけれど、あのサビの腕をブンブン振り回すダンスは大人数でやってこそかなという気もした。
奈和ちゃんがかなりきつそう。
ハロウィンナイト
横山由依をセンターに全員で披露。
やっと一息つけました。
最後のMCコーナー。
田野ちゃん「これで終わりかと思ったら、まだ(ダンス曲が)続いて、『えー!』って思ったでしょ?」
これは確かにあるかも。
長い光
本編ラスト。
田野ちゃんが最初のヴァースを担当。
私服風の衣装がかわいい。
よこゆいはん。
田野ちゃんのソロ。
声の通りと伸びの良さがすごい。
水を得た魚のようでした。
長い光よ 永遠の祈り
何億光年 思い続けてる
晴れた夜にも 雨の夜にも
私を見守ってくれた人
この部屋の灯りを消して
あなたの光に包まれたい
あらためて素敵な歌詞だ。
こういうミディアムバラードで終わるというのは良い構成。
希望的リフレイン
アンコール明け一曲目。
WセンターはSHOWROOMの投票で決まった岡田奈々&横山結衣。
青を基調にした無地とピンストライプのクレリックシャツ、ネイビーのネクタイ、パッチワークのスカートで揃えた制服風の衣装がかわいい。
当然のように大盛り上がり。
大声ダイヤモンド
良かった。
小田えりなと早坂つむぎの組み合わせがかなり利いている。
特に冒頭のおだえりのソロによる「走り出すバス追いかけて」のくだりのワクワク感は、これまた本家に匹敵する。
恐るべきおだえり力。
誰かのために~What can I do for someone?~
懐かしい。
東日本大震災のときよく流れていた思い出がある。
やり切ったこの表情、とても素晴らしい。
涙をこらえてましたね。
これを見られただけでも十分。
まとめ
「神曲縛り」ということで、シングル曲が多めなのかなと思いきや、意外と公演曲も豊富だった。
エースの名にふさわしく、岡田奈々は多くの曲でセンターやフロントを努めている。
そのしわ寄せといってはあれだけれど、通常の公演とは異なり、ユニット曲でなかなか目立ちにくいメンバーがいることも事実。そういったメンバーのファンにとってはちょっとガッカリかもしれない。
でも、歌やダンスに秀でたメンバーがそれぞれの個性を発揮しているのを見るのはとても楽しい。いわゆる公演のように、コールやMixで盛り上がるというよりは、ショーとして観覧するといった感じだろうか。
前半ユニットの楽器による生歌、そして後半ユニットのさながらダンスバトルのようなパフォーマンスは、一瞬足りとも気が抜けない。外山大輔さんの『ミネルヴァよ、風を起こせ』公演も良かったが、総合的にはこちらの『神曲』のほうが上かもしれない。
最近のAKBには、もう一度劇場から盛り上げていこうという機運を感じるが、その意味でもこの公演は重要だ。井上ヨシマサさんが取材に答えていっていた「パフォーマンスに優れたメンバーが、個人主義にならず横のつながりを持って欲しい」という言葉の通り、この公演をひとつの指針にして、ひとりひとりが個々のパフォーマンスを高めていけたら、きっとすごいグループになるはず。
かっこよくてかわいい、あの頃のAKBの面影を見た気がした。
大満足の初日でした。