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AKB48「LOVE TRIP」待ちに待ったMVがこれかよ

AKB48の45thシングルの表題曲「LOVE TRIP」のMVを見ました。

総選挙で選ばれた16人が歌う楽曲。

よくも悪くも、今年のAKBの顔となる曲でありメンバーです。

まず最初に謝る。

散々文句を垂れて申し訳なかった。

ニッポン放送の『AKB48のANN』で初解禁されたのを聞いてから気づいていたけど、「LOVE TRIP」フルで聞くと悪くないっすね。

もちろん、これが『時をかける少女』の主題歌としてふさわしいとは一ミリも思っていないけど、純粋にAKB48の楽曲として聞く分には、まあ、これもありかなくらいには思える。なにより、肝心の日テレ版『時かけ』があんなザマなので……。

さらにいえば、イントロの加工音のダサい感じといい、歌詞の『ALWAYS 三丁目の夕日』的なノスタルジックな雰囲気といい、これが夏休みの小中高生向けジュブナイルSF映画の主題歌だとすれば、かなりピッタリだと思う。"まちがった未来を正すために少年少女が過去にタイムトラベルをし、そこで淡い初恋を経験する"みたいな映画ね。そういう作品のテーマソングとしてなら、「LOVE TRIP」はうってつけでしょう。

ただし、楽曲の質とMVの質はまた別問題。

「LOVE TRIP」のMVはAKB48史上トップクラスの失敗作である、と思う。

 

「LOVE TRIP」MVをダメにした3つの要因

必然性のない企画

そもそも論として、このMVの出発点となる「告れ日本PROJECT」からして疑問だ。

いかにも広告代理店の社員が考えたっぽい、このダサい企画。いったいどういう発想で、AKB48が告白のサポートをするって考えに到ったのだろうか。企画のサイトにはいろいろと理屈をこねているが、苦し紛れにもほどがある。「会いたかった」に恋の応援歌なんてイメージはないだろう。「恋愛離れが進んでいるといいます」って、恋愛禁止を掲げたおまえらがそれを言うのか?

まぁ、百歩譲って「告れ日本PROJECT」はいいとしよう。

しかしですね、素人やファンの告白をMVの題材に使うって、HKT48の「74億分の1の君へ」でやっているじゃないか。おまけに、どう見ても「74億分の~」の方が、曲とのシンクロ具合をはじめとして、MVとしてのクォリティが高い。

どういうつもりでこの企画を通したのか、マジで疑問です。

告白という題材にそぐわない楽曲

そもそも論パート2として、「LOVE TRIP」という曲は告白云々という企画にふさわしくない。

というのも、上にも書いたように、この曲の世界観はノスタルジーに支配されているから。つまるところ、歌われているのはこういうことだ。

 

いま考えると、あの娘は間違いなく俺に気が合ったよな。あそこで告白してれば、絶対付き合えたよ。何人かと付き合ったけど、やっぱ俺、あの娘が一番好きだわ。なんであの時告白しなかったのかなぁ。いま会ったら、あの娘、どんな風になってるかな。

 

ここからわかるのは、「LOVE TRIP」という曲は、暗に"告白しなかった恋が一番"というメッセージを内包しているということだ。成就した恋よりも、あの時もしも告白していたら……と考える恋が一番楽しいってこと。

もちろん、ノスタルジーに浸る曲は星の数ほどある。そして、実際、過去の可能性をあれこれ考えることほど楽しいものはない。

でも、告白をサポートって企画でそういう歌を使うのはどうなんでしょうかね。むしろ、告白しないほうが後で好き勝手に想像できていいぞって歌じゃん。

加えて、「LOVE TRIP」の想定する時代は非常に古い。「空き地も丘も消えてた」という歌詞から考えると、歌の主人公はかなりのオッサンだ。おまけに、先述したダサく加工された声で「LOVE TRIP LOVE LOVE TRIP」と歌いだすような曲ですよ。

あらためて、そういう歌で告白をサポートってどうなんですかね。

企画を生かす気ゼロの演出と構成

まぁ、千歩譲って、この曲で告白をサポートという企画があってもいいとする。

……でもさぁ、これってAKB48のMVだよね? 

ファンは素人の告白が見たいのではなく、メンバーの反応が見たいのだ。さらにいえば、素人の告白を本気で応援して、どうしたら成功するか真剣に考えて、結果、依頼人と心から喜んだり悲しんだりするメンバーを見たいんだよ。なのに、このMVで映っているメンバーときたら、ついさっきバスで到着して、五分前に知り合ったっぽい人の告白を覗き見して、成功したから大喜び。

嘘つけ、そんなさっき会ったばかりの奴に感情移入できわけないだろ!

この企画を本気でやるなら、もっとメンバーを関与させなければならなかったと思う。依頼人と会い、告白相手の特徴や好きになったきっかけを聞きだし、それを元にメンバーが告白の作戦を立てる。そういうシーンがきちんと映されていれば、成功して喜ぶ姿も本物に感じられるし、ファンもがんばるメンバーに感情移入する。いざ告白となったときは心底ドキドキするし、成功しようが失敗しようが、依頼人やメンバーと感動を共有できたはずだ。

ところが、少なくとも現在公開されているMVでは、メンバーは現地に行って「がんばって」と応援し、ちょっと手伝ったり、こっそりのぞき見するだけ。それで、成功したら大喜び。でもさ、これは告白が成功して喜んでるんじゃなくて、「キャー、告白を見ちゃった」という照れ隠しも混ざった野次馬的な嬌声でしょうが。

これじゃあ、メンバーが告白をサポートって企画の醍醐味が感じられない。

正確にいえば、メンバーがある程度関与していることを示唆する場面はある。たとえば、最初の告白では、松井珠理奈と島崎遥香が下駄箱で文字を作るという作戦を考えたのかもしれない。しかし、この程度ではまったく不十分。徹夜でアイディアを考えたり、小道具を買いに行くといったシーンは(演技であろうとも)必要不可欠だったと思いますよ。

それから、たまに挿入されるバスの車内ショット。「ほら、メンバーはバスで眠るほど、告白の応援をがんばってますよ」とでもいいたのだろう。しかし、メンバーが常に睡眠不足なのは、ファンなら誰でも知ってることだ。夜も眠らず告白をサポートしてるのではなく、ただただ仕事で疲れて眠いだけだろうに。仮にそれほどAKBに興味がない人でも、あのショットを見て、「へぇ、AKBってここまで真剣に告白の応援をしてるんだね」なんて思わないよ。

……ひょっとして、思いますかね。そうなら、ファンが増えてうれしいけど。

まとめ

メンバーの素の表情が見れるわけでも、作りこんだ演技が見れるわけでもない。中途半端にドキュメンタリックにしたり、演技の部分を入れたり、このMVはどっちつかずの演出と構成だ。告白する人される人およびその友達がいるせいで、必然的にメンバーが映る時間も減る。音楽と告白がシンクロするのは最初だけで、あとはあまり関係なく進む。そもそもメロディがメロディだけに告白というロマンチックな行為と食い合わせが悪いのはしかたないが、それは見る側は知ったことではない。

いったい、このMVは誰得なのか。

あえていえば、この「告れ日本PROJECT」なる企画を立てた誰かさんが得をしたのだろう。あとは、企画に参加したみなさん。どうぞ末永くお幸せに。

でも、ぼくはこのMVをまったく好きになれないです。

こんなことは言いたくないが、乃木坂46「裸足でSummer」のMVと比べると、雲泥の差があると思う。どちらがメンバーを魅力的に映しているかといえば、答えは明らかなはずだ。

ついでに、メンバーの衣装が野球のユニフォームをモチーフにしたのも疑問ですね。「光と影の日々」を意識しているのかもしれないけど、普通、応援といえばチアガールでしょうが。このディレクターとはとことん相性が悪い。

ただし、タイトなズボンのおかげで妙に下半身が強調されるので、そこはよかったです。というか、そこだけはよかったです。下半身をムチムチに映したかったという理由でこの衣装にしたのなら、納得できます。バッチリでしたよ。

これはこれとして、できればもう一つ、メンバーだけが出演するMVを作ってはくれないだろうか。その内容は、先述したようにジュブナイルSFがいい。指原扮する主人公が、過去にタイムスリップしてまゆゆと恋をしたりしながら地球を救うという物語だ。びっくりするくらい安っぽいCGを使って、なるたけチープな作品に仕上げてほしい。

それが無理なら、せめて、メンバーが告白をサポートする姿をきちんと撮影したものを、特典映像に付けてくれ。

頼むよ。