AKB48 47thシングル「シュートサイン」全曲レビュー
AKB48の47枚目のシングル『シュートサイン』を買いました。
いや、買ったのはだいぶ前なんですが、全曲聞いてMVを見たのはつい最近なので、いまさらながら感想を書きます。
全タイプ共通 シュートサイン
シングルの表題曲。
小嶋陽菜の卒業シングルであり、かつドラマ『豆腐プロレス』のテーマソングという難しい物件だけあって、MVには苦心の跡がうかがえる。
まず、この曲が初めて解禁されたのは『ミュージックステーション』だったのだが、そのときの印象は最悪だった。映画『サタデーナイトフィーバー』のジョン・トラボルタを彷彿とさせる天に拳を突き上げる振付といい、ポジションチェンジがほぼないところといい、過去最低クラスの出来だと思いました。
このへん、振付師のTAKAHIROさんについても言いたいことがあるんだけど、それは後に回す。
で、いざ曲だけ聴いてみるとこれがなかなかいい。
アントニオ猪木のテーマソングである『炎のファイター』を連想させるムーディーなメロディーは聴けば聴くほど味わい深いし、心なしかサビではテンポアップしているようにも思えて、それが「夢がいつかは終わるなら/砕け散ったって構わない」に代表される焦燥感に満ちた歌の世界観を音として巧みに表現している。
なにより、サビのコーラス部分の「真実は(ひとつ) 愛か?(それとも幻か?)/シュートサイン」の高音から低音に真っ逆さまに落ちるような響きはクセになる。
歌詞については、下手に恋愛を絡めず叶うかどうかわからない夢を追いかけるというテーマに絞ったほうが良かった気もするけど、センターが小嶋さんでそれだとキャラに合わないので、まあしょうがないかな。
ただし、MVは大いに不満。
メンバーよりも、神取忍さんや南海キャンディーズのしずちゃんといったゲストのほうがアップで映る時間が長いんじゃないかと思える。歌唱シーンはリングの上で撮影しているのだが、選抜メンバーが多すぎるあまりリングに乗りきらず後方のエプロンサイドで踊っているメンバーもいて、これじゃあせっかく表題曲の選抜に入った甲斐がない。
おまけに前述のようにフォーメーションを入れ替える場面がほぼないので、ここのメンバーの見せ場がなく、一列目のメンバーのファン以外はあまり楽しめない構成になっている。
曲がよく歌詞も許容範囲なだけに、MVが残念でした。
小嶋さんのスタントをした紫雷さんはじめとするゲスト陣はさすがの活躍です。宮脇咲良もなかなか堂々としたもんだった。
TypeA、B、C、劇場版共通 気づかれないように
小嶋陽菜のソロ曲。
申し訳ないけど、これといった感想がないです。
MVに高橋みなみと峯岸みなみが出演していて、真っ赤なルージュの色っぽい小嶋さんが楽しめるのが見所かなぁ……。
TypeA Vacancy
SKE48の曲。
これは最高! このシングルの中で一番好きな曲。
金管楽器の鳴りひびく明るくキラキラしたメロディと、ストレートに女の子の恋愛を扱った歌詞。これぞアイドルソングの王道でしょう。こういうメロディラインを聴けただけで満足なんだけど、さらにうれしいことにMVも凝っている。
真っ白な衣装を着たメンバーが好き放題に壁にペンキを塗っていくんだけれど、しだいにメンバー同士でお互いの衣装にも塗りはじめる。
この時点で、メンバーのイチャイチャという要素が加わり、ぼくの中では十分合格なんですが、さらに、実は衣装と壁にはあらかじめテープが貼られていて、それをはがすとタイル模様とVacancyの文字が浮き上がるという演出まである。
こんなに素敵な演出は見たことない!
あえて気になるとすれば、歌詞のストーリーが「彼氏と別れた女の子が、前から自分に気のあるそぶりを見せていた男に『いまだったら私フリーだよ』と誘う」っていう、なんだかな~というものだってことくらいだけど、それもこの曲調とアイドル感いっぱいのメンバーが歌うとコケティッシュでいいかなと許せてしまう。
サビの「どうぞどうぞどうぞ」が弾けるようでとってもカワイイです。
歌唱パートのダンスもきっちりそろっていて、さすがSKE。
「チキンLINE」、「金の愛、銀の愛」と暗い曲ばかりだったけど、アルバムからこっち明るく爽やかな曲があてがわれていてなによりです。
TypeB 真夜中の強がり
NMB48の曲。
のっけから反町隆史の名曲「Poison」を彷彿とさせるギターサウンドが鳴る。なんというか、「ナニワの女は顔で笑って心で泣いてるんやで!」っていう感じの歌。
すっごく懐かしい曲調だし、めちゃくちゃいい曲な気もするけれど、いまのところあまり引っかからない。
相変わらず、さや姉はかっこいいです。
TypeC 止まらない観覧車
HKT48の曲。
冒頭の床に寝てのフォーメーションダンスが象徴するように、非常に機械的で無機質な振付が特徴的なMV。
残念ながら、この曲もあまりこれといった感想はない。
トランペットかサックスかわからないけど、せっかく大人っぽい曲調なんだから、森保まどかや松岡菜摘のようなお姉さんメンバーをフロントに持ってきてグッとムードのあるMVにすればいいのにと思った。
TypeD、E共通 アクシデント中
いわゆる本店とteam8から19歳以下のメンバーを集めた曲。
岡田奈々、小嶋真子、向井地美音、福岡聖菜、村山彩希、川本紗矢というぼくの大好きなメンバーがいるのに加え、本店生え抜き期待の星である久保怜音が参加しているということで甘い評価をつけたいところだが……微妙すぎる曲だ。
明治・大正・昭和・平成の女学生や女子高生の衣装が楽しめるとあって、MVはそれなりのもの。特に最後のちょっと遊んでそうな女子高生衣装はたまらん。
ただ曲がね……これって、女子高生っていうよりOLの歌じゃないですか?
深読みすれば、「私はアイドルだから男なんかいらない、恋愛しないといっていた女の子が恋に落ちてしまいました」とも解釈できて、つまりアイドルのスキャンダルってアクシデント=出会いがしらの事故だから防げないってメッセージかなとも思うのだが、ただやっぱりこれは30歳くらいの女性が主人公の歌でしょう。
それをU19のメンバーに歌わせるっていうのはちょっとヒネりすぎですね。
素直に「Vacancy」みたいな曲を聴きたかった。
千葉恵里の前髪ぱっつんのかわいさでなんとか救われている。
TypeD みどりと森の運動公園
NGT48の曲。
タイトルがめちゃくちゃ覚えにくいっす。
メンバーがいくつかの団体に分かれて集結するというMVの冒頭の構成は完全に「MAXとき315号」を意識したもの。
曲は懐かしくて爽やかなフォークソングみたいで、新潟の澄み切った空と大地の気配を感じる――と書くと定型文みたいだけど、これはあながち冗談じゃなくて、MVでもはっきりわかるくらいに新潟の大気は澄んでいるのです。
これがとっても美しくて、NGT48というグループの特殊性というか土着性というか、都会にそまりきらないアイドルっていう雰囲気と見事にマッチしてます。
マフラーに手袋という究極萌え装備でのダンスパートがあり、かつ「Vacancy」と同じくイチャイチャパートもある。
↑これ、ゲレンデでたき火して風船みたいなのを飛ばすという訳がわからないシーンだし尋常じゃないくらい横なぶりの雪が降ってるんだけど、メンバーがすごく楽しそうで生き生きとしているので、見ているこちらも自然と楽しくなってくる。
「MAXとき315号」にはいなかった柏木由紀も参加していて、北原里英とともに若いメンバーに交じってはしゃいでおり、やっとひとつのグループになった感じ。
TypeE 誰のことを一番愛してる?
AKB48グループ、乃木坂46、欅坂46のメンバーを集めた坂道AKB名義の曲。
格付終了感ハンパねえなぁという感じ。これに参加したメンバーは、少なくともアイドルとしては一生平手友梨奈の風下に置かれることになる。その意味で、平手以外誰も得しないんじゃないかな。
曲は普通にいい曲。
ぱちんこAKBのチームサプライズ名義の「バラの儀式」みたいな不穏さを醸しだしている。
ただねえ、自分が作ったグループの人気メンバー集めて「あなたは私のすべて/独り占めするためには誰を殺せばいいの」って、それを秋元康が自分で作詞して歌わせるか?ってのは思いますね。
これぞ究極のマスターベーションだろっていう。
あと、紅白のときも思ったんだけど、TAKAHIROさんの振付はMVだとカッコイイんだけどステージだと「あれ?」って思う可能性があるので、そこはちょっと判断保留。
この曲の振付にしても、①腕をやたらめったら動かしたり、②憑依したように暴れたり、③小刻みにステップを刻んだりといったTAKAHIRO振付に共通して見える部分があって、それはMVでカットを割ったり斜めから撮影したりしたときはかっこいいんだけど、ステージ上で見るとものすっごいチマチマした動きに見える。
なんというか、TAKAHIROさんの振付は非常に規律的・規則的・軍隊的で、ある種の行進やマスゲームのような整然とした美しさはあるんだけど、そのかわりに伸びやかさとか華やかさといったものがないんじゃないかな~とか思ったり思わなかったりラジバンダリ。
で、それってグループアイドルの振付としてどうなんだろうかというのをずーっと考えてるんだけど、いまだに答えは出ない。結論が出たらまた別に書くかもしれません。
MVは文句なくかっこいいです。
まとめ
小嶋陽菜の卒業シングルなんだけど、残念ながら個人的に最も気に入ったのはSKEとNGTの曲でした。まあ、小嶋さんは「ハートエレキ」とかいい曲がいっぱいあるから、それで我慢してください。
いままでお疲れさまでした。